ずっと、私は・・・






 Lonely Girl






 ●月●日



 今日も朝六時半に起床。独りで御飯を食べて、誰にも見送られる事無く家を出る。

家族は、居るけど居ない。もう三ヶ月程顔を合わせていないのだろうか。正確な日にちでさえ忘れる長さだ。

まぁいい、誰にも気兼ねすることのない生活なんて最高じゃないか。

 そして独りで学校へ行き、独りで休み時間を過ごし、独りで昼食を摂って、独りで帰路へ就く。此れが私の日常。

 此れで良い。私は独りで居るのが好きなんだ。莫迦が集まって騒いでいるのを見ると吐き気がする。

わざわざあんな訳の判らない集団に混ざりたいとも思わない。ああいう連中の考える事なんて所詮低俗でしかないのだ。

そんな人達に混ざってしまうと自分さえ見失ってしまうかもしれないというのに。

 あれらは何を思ってあんな事をしているのだろうか、全く。





 ●月●日



 今日もいつもと同じ生活を送る、筈だったのだが。

「ねぇ、一緒に学校行こうよっ!」「次理科室だよ、一緒に行こっ!」

 なんと、私が纏っている近寄るな的オーラをものともせずに、清々しい程の笑顔でずかずかと近付いてくる強者が現れた。

昨日の席替えで後ろの席になった女の子だ。

”一緒に”。なんて鬱陶しい言葉だろう。そんなにつるんで何が楽しい。そんなに独りが嫌なのか。

 何かと邪魔なので、とりあえず無視することにした。

「ねぇってばぁ、一緒にご飯食べようよ〜!」

 奴はめげなかった。大抵の奴等は此れで諦めるというのに。なんという打たれ強さだ。

しかし其れでさえ私にとっては鬱陶しい以外の何物でもなかった。

こういう奴には一言言ってやるべきだろう。

「あのさぁ、君、なんでそんなに私に構うのかな。私は戯れるのが嫌いなんだ。君の存在も私にとっては邪魔でしかないの。

だからもう近寄らないで頂戴?うざいんだよね、そういうの」

 其れを聞いた彼女は、一瞬傷付いたような顔をして、私の許から離れて行った。

ほら、簡単だ。たった一言でひとつの人間関係が消滅する。所詮こんなものなのだ。

これでまた、私の周りから人間が居なくなる。

これでまた、私の孤独で素晴らしい日常が戻ってくる。





 ●月●日



 今日はあの子は来なかった。

朝も、休み時間も、昼食時も、放課後も。

当たり前だ、昨日私が突き放した。昨日、私が傷付けた。

 此れが私の望んだ世界、私の求めた日常なんだ。

孤独で孤高、高尚に生きると決めたんだ。あんな低俗な輩から学ぶ事など唯一つとして無い。

 なのに・・・何故私に”淋しい”なんて下らない感情が生まれつつあるんだろう。





 ●月●日



 幾ら考えても判らない。如何しても結論に辿り着けない。

 一日あの子に付き纏われただけじゃないか。

たった一日、其れが私に何をもたらしたというのだろう。

 今まで生きてきた中で、私に付き纏う人間なんて沢山居た。

それでも、私は全てを拒絶してきた。淋しいなどと思った事は一度として無かった。

無かった、筈だ。

 一体私に何が起こっているんだろう。





 ●月●日



 私は意を決した。

他人と話すのは大嫌いだけど、判らない事を其のまま放置するのはもっと嫌いだ。

だから私はあの子に近付いた。一体私に何をしたのか、其の答えを聞く為に。

 なのに、何処を如何間違ったらこうなってしまうのだろう。

「うんっ、新発売のポッキーも当たりだねっ!あれ、食べないの?これ美味しいよ」

 私は何故かオレンジに統一された部屋の中に居た。眼前には清々しいまでのあの笑顔。

学校で少し話し掛けただけなのに、あれよあれよという間に彼女の部屋まで連れてこられたのだ。ある意味誘拐である。

別に私は彼女と戯れたい訳では無いのだ。

 私が其の事を言おうと口を開きかけた時、しかし其れを制すように彼女が言葉を発した。

「ん、でも良かった。私嫌われてるのかなって思ってたから。今日話し掛けてくれてホント嬉しかったよ!ありがとね!!」

 そして満面の笑み。其れを見て、頭では鬱陶しいと思いながらも、安心したようにつられて笑う私が居て。

 そうか、そうだよな。やっぱり私、本当は・・・


・・・淋しかったんだ。

彼女が其れを教えてくれた。私の気付かなかった、私の本音。

其れに気付いたと同時に、胸につっかえていた、あの感覚がすっと消えた。

 もう、強がらない。自分に正直に生きてみよう。

家族にもぶつけてやるんだ。今まで抑えてきたもの、全部、全部。

 そして明日は皆で過ごすんだ。私の前で笑ってくれているこの子も招いて。





 そう、明日は私の誕生日。少しくらいワガママ言ってもいいだろう。






*作者コメント*

緋月様に相互記念で贈らせて頂いた代物です。こんな駄作を送りつけてしまって申し訳無いです;;
此れを読んだ緋月様が【オモチャ箱】のリンクを外したくなってしまわれたら私はウタチャンになんと弁明すればいいんでしょうか。

えと、初めて語り部をオンナノコにしてみました。如何な物でしょうかね。本人は新鮮で楽しかったんですが・・・
苦情はバンバン受け付けます。でも石は投げないで下さい。
緋月様、返品は半永久的に24時間受け付けます。いつでもお気軽にドウゾ《ォィ

ではでは、相互リンク有難う御座いましたvv






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